教育内容専門教育
日本薬学会の薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠した8区分(分野)の専門教育科目(『物理系薬学』『化学系薬学』『生物系薬学』『健康と環境』『薬学と社会』『医薬品をつくる』『薬と疾病』および『薬学実務実習』)に加え、『総合演習』および『卒業研究』を開設し、薬剤師国家試験受験資格を取得できるカリキュラムです。特に医療薬学領域を重視し、『生物系薬学』および『薬と疾病』の分野を充実させています。一方、食生活を含めた総合的な健康増進を支援するアドバイザーとして必要な専門知識を広く修得するため、医療薬学領域のみならず、関連する科目を『健康と環境』および『薬学と社会』に開設しています。科目区分(分野)ごとの教育目標と主な開設授業科目は次の通りです。
薬学科専門教育の特徴
物理系薬学
主に1~3年次に開講。化学物質の基本的性質を理解するために、原子・分子の構造、熱力学、反応速度論などの基礎知識に加えて、それらを応用する技能を身に付けます(薬品物理化学Ⅰ・Ⅱ、物理化学実習、界面化学、放射線化学、分析化学・放射線化学実習)。また、医薬品を含む化学物質をその性質に基づいて分析する能力を身に付けるために、物質の定性・定量分析などに必要な基礎知識と技能を修得します(分析化学Ⅰ・Ⅱ、分析化学・放射線化学実習、日本薬局方概論)。さらに、生体の機能や医薬品の働きが立体的な相互作用によって支配されていることを理解するために、生体分子の立体構造、生体分子が関与する相互作用、およびそれらを解析する手法に関する基礎知識と技能を修得します(機器分析学)。
化学系薬学
主に1~3年次に開講。医薬品および生体物質を含む化学物質の基本的な反応性を理解するために、電子配置、電子密度、化学結合の性質などに関する基礎知識を修得します(薬化学総論、有機薬化学Ⅰ・Ⅱおよび同実習)。また、医薬品を含む目的化合物を合成するための基礎知識(薬品製造学Ⅰ・Ⅱ)、生体分子の機能と医薬品の作用を化学構造と関連づけて理解するための基礎知識を修得します(生物有機化学)。さらに、天然物を医薬品として利用するために、それらの起源、特色、構造、物性、生合成系などの知識を修得します(薬用植物学、生薬学および同実習、天然物化学)。
生物系薬学
主に1~3年次に開講。生命体の成り立ちを個体、器官、細胞の各レベルで理解するために生命体の構造および機能調節などに関する基礎知識を修得します(機能形態学Ⅰ・Ⅱおよび同実習、生化学Ⅰ~Ⅲおよび同実習)。また、生物をより微細なレベルで理解するために、細胞の機能や生命活動を支える分子の役割についての知識を修得し、これらの生体分子を取り扱う基本的技能を身に付けます(細胞生物学Ⅰ・Ⅱ、分子生物学)。さらに、内的および外的要因によって生体の恒常性が崩れたときの変化を理解するために、生体の防御機構とその不全疾患、および代表的な病原微生物に関する基礎知識を修得します (微生物学、病原微生物学、微生物学・免疫学実習、ウイルス学、免疫学Ⅰ・Ⅱ)。
健康と環境
主に2~4年次に開講。健康の維持、増進に貢献できるように、食品の機能と栄養に関する幅広い知識、現代社会における疾病予防に関する基礎知識を修得します(衛生化学Ⅰ・Ⅱ、食品機能学、栄養学、健康薬学)。また、公衆衛生向上に貢献するため、社会における集団の健康と疾病の現状を把握する保健統計と疫学に関する基礎知識、技能を修得します(公衆衛生学Ⅰ・Ⅱ)。さらに、人の健康にとってより良い環境と安全で安心な社会の維持に必要な、化学物質の人体への影響、地球環境と人の健康との関連、および犯罪における物的証拠の鑑定についての知識、技能を修得します(環境科学、毒性学、裁判化学)。これら各科目に関する実習を「衛生薬学実習」として実施します。
薬学と社会
主に3年次以降に開講。社会において薬剤師が果たすべき責任・義務などを正しく理解し、医療従事者または健康アドバイザーとして必要な幅広い知識を修得します(臨床心理学、介護概論)。薬学に関連する法規、制度の精神とその施行に関する基礎知識を修得し、それらを遵守する社会性を身に付けます(薬事関係法規、同演習)。また、地域薬局の業務を理解するために、セルフメディケーションに関する基礎知識および一般用医薬品(OTC薬)、漢方薬、サプリメント、保健機能食品について概説できるようにします(薬局経営学、和漢薬概論)。なお、国際化社会を考慮して、「薬学英語」を配置します。
医薬品をつくる
3年次以降に開講。製剤化の知識と方法を理解するため、薬物と製剤材料の物性、医薬品への加工、および薬物送達システムに関する基礎知識と技能を修得します(製剤学)。
また、放射性医薬品、微生物関連医薬品や様々なバイオ医薬品の各開発プロセスについての基礎知識、求められる適切な倫理観を修得します(微生物薬品学、ゲノム創薬学、創薬化学)。また、医薬品開発における治験に関する知識、求められる適切な態度を修得します(治験コーディネート論)。加えて、宇宙の微小重力環境を利用した創薬研究という新しい分野を総合的に解説する「宇宙と薬学」をアドバンスト科目として開講します。
薬と疾病
本分野は、教育目標に沿って以下の3つの項目に分類されています。
- 薬理・薬剤学系
主に2~4年次に開講。医薬品が作用するプロセスを理解するために、薬物の作用機序に関する基礎知識および関連技能を修得します(薬理学Ⅰ〔総論〕・同Ⅱ〔中枢〕・同Ⅲ〔末梢Ⅰ〕・同Ⅳ〔末梢Ⅱ・前臨床評価〕および同実習、臨床薬理学)。また、生体内における薬物の運命を理解するために、吸収、分布、代謝、排泄の各過程に関する基礎知識とそれらを解析するための基本的技能を修得します(薬剤学および同実習、薬物動態学)。
- 治療学系
2~4年次に開講します。身体の病的変化を病態生理学的に理解するために、代表的な疾病と臨床検査値に関する基礎知識と技能を修得します(臨床医学概論、疾病学Ⅰ・Ⅱ、臨床生理学および同実習、臨床検査学)。さらに、疾病に伴う症状と臨床検査値の変化などの的確な患者情報を収集するための基本的技能と、それらの治療に用いられる代表的な医薬品に関する基礎知識を身に付けます(薬物治療学Ⅰ・Ⅱ)。また、医薬品の安全性および生体内での代謝に関する知識を身につけます(医薬品安全性学、臨床薬物代謝学)。
- 実学系
3年次以降に開講。病院薬剤師および薬局薬剤師の業務と責任を理解すると共に、医薬品の適正使用に必要な医薬品情報を理解し、正しく取り扱うことができるように、医薬品情報の収集、評価、提供、管理に関する基礎知識、技能を修得します(病院薬学、医薬品情報論、薬局管理学)。さらに、個々の患者に対する適切な薬物治療“テイラーメイド医療”を理解するために、患者からの情報収集、評価に必要な基礎知識、技能、態度を修得します(医療統計学、調剤学)。