生体内では様々な代謝反応が生じ、生命活動の基盤を構成しています。代謝反応の不均衡が、いわゆる生活習慣病などの形成に関わっていると考えられています。そこで、血液や尿中の代謝物変化を調べることが疾患の診断に有用と考えられ、臨床検査に応用されています。一方で、臓器・組織から排出された後に計測するため、病変部位の特定、分析のためにはもう一段の検査が必要になります。 物理化学分野の一つである磁気共鳴法は、医薬品を含む化合物の構造決定、同定などに用いられる分析技術、イメージング法です。しかし、検出特異性や感度などの点で十分ではなく、一般的には組織構造異常の検出のみに用いられ、生体内代謝物の検出においてはその応用範囲は限られています。私たちは、磁気共鳴法を発展させることで新しい生体代謝分析・イメージング法を確立し、疾患分析に応用したいと考え研究を進めています。分子の各軌道は二つの電子を含むことが出来ますが、一つの電子を含む状態で安定に存在する化合物があります。この不対電子(フリーラジカル)を有する化合物は電子スピンを有しており、電子の持つ高エネルギーを利用した高感度分析が可能で、基礎研究段階では虚血性疾患や低酸素癌の検出等に用いられてきました。私たちは、酸素応答性や電子伝達異常などの疾患検出に本手法を発展・応用することを目的として、計測技術開発、モデル疾患動物での計測を進めています。
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