学術研究トピックス
【薬学科】薬学部 生化学研究室 野嶽勇一講師と榊原隆三教授らによる 世界初の「美肌菌基礎化粧品」の開発 -地域社会に貢献する長崎国際大学発・産学共同研究-
1.研究の概要
多様な皮膚常在菌の中には、皮膚の保湿やバリア機能の改善に対して好ましいスキンケア効果を示す微生物(Staphylococcus epidermidis;“美肌菌”と呼ばれている)がいます(図1)。薬学部生化学研究室の野嶽勇一講師*1と榊原隆三教授*2らの研究グループでは、「美肌菌によってもたらされるスキンケア効果をより多く・より確実に享受するための新しい美容法」を開発することを目的とし、東京女子医科大学の出来尾格講師および長崎県大村市の(株)バイオジェノミクス*3との間で産学共同研究に取り組んできました。
野嶽講師らによるこれまでの主な研究成果としては以下の3点が挙げられ、科学専門雑誌に論文が掲載されています。
① “自分の皮膚”から採取した皮膚常在菌の中から“自分の美肌菌”を選抜し、これを培養して増殖させた後に、“自分の皮膚”に塗布して戻す“美肌菌戻し法”を構築した(図2・図3)。
② 美肌菌戻し法の継続によって、皮膚上の美肌菌の定着量が増大することが明らかとなった。
③ 美肌菌戻し法が、皮膚の保湿改善に有効であることを示すとともに、皮膚の弱酸性化や荒れたキメの改善に対しても一定の効果が得られることを明らかにした。
これらの研究成果は特許の出願後に所属学会等でも発表されており、「自分の美肌菌を活用する」という野嶽講師らの他に類を見ない斬新な着眼点が大きな反響を呼んでいます。また、地域社会に貢献する産学共同研究の好例としても多数のメディアに紹介されており、地域社会の牽引役としての本学の研究活動への取り組みが注目されています。
2.製品化について
野嶽講師らのこうした研究成果を基盤として、このたび、美肌菌の特性を活かした独創的な「美肌菌基礎化粧品」が製品化に至り、バイオジェノミクス社より「美肌菌バンク」の商品名で販売されることになりました(図4)。
昨年12月5日には世界初となる美肌菌基礎化粧品の誕生を記念して、東京において「美肌菌バンク&専用化粧品新発売記者発表会」*4を開催しました。本基礎化粧品の使用方法の概要は、以下の通りになります。
① 初回購入時に、自分の額部に生息する皮膚常在菌を採取。
② 独自の方法により、バイオジェノミクス社内で美肌菌を選抜・培養・粉末化。
③ 購入者は美肌菌粉末を専用ローションに混和して、就寝前に顔部に塗布。
④ 購入者の美肌菌はバイオジェノミクス社内で凍結保存し、2回目の購入以降はこれを用いて培養。
現在、市販されている多数の基礎化粧品には、美肌菌による恩恵を享受する目的のために、美肌菌の増殖促進剤が添加されています。しかしながら、スキンケア効果が限定的であったり、個人の体質に大きく左右されたりすることが課題の一つとされてきました。
今回新たに開発された美肌菌基礎化粧品のように、自分の美肌菌を直接活用した基礎化粧品は他に類がなく、まさに、世界で初めての「オーダーメード型基礎化粧品」の開発に至ったと言えます。「世の多くの女性が願う“より美しくなりたい”という気持ちに応えたい!」という野嶽講師や榊原教授らの熱意が形になりました。今後も、最“西”端の地より、最“先”端の情報発信に努めていきたいと考えています。
3.備考
*1 野嶽 勇一 (のだけ ゆういち) 講師
九州大学大学院農学研究科博士後期課程修了後、理化学研究所(SPring-8)および国立循環器病研究センターでの研究生活を経て、2006年より本学薬学部に所属。主な専門分野は、生化学、機能性食品学、構造生物学。日本農芸化学会西日本支部奨励賞(2011年)、日本食生活学会奨励賞(2012年)、森永奉仕会賞(2013年)を受賞。
*2 榊原 隆三 (さかきばら りゅうぞう) 教授
大阪大学大学院医学研究科博士課程修了後、大阪大学医学部、米国テキサス大学、長崎大学、および九州女子大学を経て、2005年に本学健康管理学部に所属。翌年以降、薬学部に所属。主な専門分野は、生化学、分子栄養学、薬理学。
*3 (株)バイオジェノミクス
「食を介した予防医学への貢献」を目的に、平成元年に本多英俊代表取締役社長により創業。長崎県大村市に本社(Human Microbial Laboratory)を置き、主に乳酸菌生産物質および美肌菌化粧品の製造・販売を行う。地元地域の振興の一役を担うために、産学共同研究にも積極的に取り組んでいる(http://biogenomics.co.jp/ )。
*4 美肌菌バンク & 専用化粧品新発売記者発表会
昨年12月5日に東京において、世界初の美肌菌基礎化粧品・美肌菌バンクの開発・販売を発表。製品の概要と開発の経緯、美肌菌活用の意義、美肌菌戻し法に関する研究データ等を紹介。本発表会の内容に関する記事はWEBサイトを中心に約50社のメディアによって発信され、大きな反響を呼んでいる。
ニュース・リリース(pdf)