社会連携トピックス
【学外講座】平成27年度後期学外講座「微生物のもたらす恩恵を堪能しよう!~古くから伝わる発酵・醸造から、最新の微生物応用研究まで~」
「微生物」と聞いて、どのような印象を持ちますか? 感染症や腐敗の原因となる「とても恐ろしい存在」でしょうか? それとも、お酒やパン、ヨーグルトやチーズなどを作る上で欠かすことのできない「おいしさの象徴」でしょうか?私たちの身の回りには多くの微生物が存在し、私たちの健康や生活に重要な影響を及ぼしています。今回の学外講座(11月12日)では、微生物の存在を身近に感じることを目的として、「微生物のもたらす恩恵を堪能しよう!~古くから伝わる発酵・醸造から、最新の微生物応用研究まで~」というタイトルの下、キリンビール福岡工場(福岡県朝倉市)への訪問を中心とした学外講座を実施しました。
31名の参加者の皆様を乗せたバスは、午前9:00に大学を出発しました。栗原邦夫地域連携室室長より学外講座のスケジュールとできたてのビールの魅力の説明を受けると、参加者の皆様のテンションが一気に上がりました! 窓の外に広がる秋の景色を楽しみながら和やかな雰囲気でのドライブが続いた後、最初の企画である薬学部薬学科の野嶽勇一准教授による「おなかにやさしい乳酸菌のお話」と題したバス内講演が始まりました。大変ユニークな自己紹介ネタや紙芝居風のアナログ的なプレゼンで笑いを取りながら、「ヒト常在菌」や「腸内細菌」が私たちの健康に深く関わっていることが解説されました。野嶽先生が取り組んでいる乳酸菌の研究についても、最新のデータを示しながらわかりやすく紹介していただきました。
笑い満載のバス内講演によって時間の経過を忘れている内に、バスがキリンビール福岡工場の敷地内に入りました。参加者の皆様は、突然目の前に現れた広大な敷地や大規模な設備に圧倒されているご様子でした。多目的ホールへ移動した後、小髙正寛工場長から歓迎のお言葉をいただきましたが、優しいお人柄を反映するようなソフトな語り口調の中からはビール造りへの熱い意気込みも伝わってきました。また、醸造エネルギー担当部長の泉賢一郎氏より、ビールができるまでの原理と各製造工程に関する大変丁寧な説明を受けました。麦芽、ホップ、水などのビールの主原料の品質や、下面発酵、オールモルト製法、一番搾り製法などのビール製法に対する会社としてのこだわり、作り手としてのこだわりに本当に驚かされました。実際にビール製造を手がけていらっしゃるプロのお話には、参加者の皆様を引き込む魅力がありました。
引き続き、ビール製造の工程を見学するために、約70分の工場見学ツアーに参加しました。発酵タンクの余りの大きさには絶句してしまいましたし、瓶詰めの正確性とスピードには目を見張るものがありました。ラベルのデザインの変遷には、時代の流れを感じることもできました。先人たちから伝わる発酵・醸造技術の魅力に十分に迫ることができました。特に、一番搾り麦汁と二番搾り麦汁を飲み比べた際には、泉氏の講演に対する理解が実体験を通してさらに深まった印象を受けました。
続いて、今回の学外講座のもう一人の案内人である薬学部薬学科の小川由起子教授の講演が行われました。「感染症から身を守る」と題した講演では、多くの微生物の名前と外観、感染症との関連性が解説されました。肺炎球菌を原因とする肺炎が死因の第3位である事実や感染力の高さについては初めて知った方も多かったのではないでしょうか。肺炎の予防上では、規則正しい生活習慣や予防接種が重要であることも十分に理解できたと思います。また、食中毒の原因となる微生物の特徴やその対策に関する情報についても解説を受けました。手洗いやエタノール消毒、まな板や包丁の消毒など、日常生活でも注意するポイントが数多くあることに気付きました。さらに、小川先生はご自身の薬剤師としての立場から、参加者の皆様が普段利用している治療薬を例に挙げて、正しい服用の仕方や副作用についても話題とされました。日常生活で役立つ情報が満載だったことから、大変満足度の高い講演となりました。小川先生がもともとは薬剤師よりもアナウンサー志望だったことも、参加者の皆様には重要な情報となりました(笑)。
いよいよお待ちかねのランチタイム! 食事前のトイレでは、参加者の皆様が普段よりも時間をかけて手洗いを徹底している様子が見られました。小川先生のご講演の効果が早速現れている何よりの証拠でしたね(笑)。おいしそうなお弁当の横に次々と運ばれてくる「できたてのビール」。 参加者の皆様は、微生物によってもたらされる恩恵を心より堪能されたご様子でした。講演や見学によってビールに対する理解が深まっていましたので、ビールの味はなおのこと格別でした。
ビールや酵母を用いたお土産を購入してキリンビール福岡工場のスタッフの皆様とお別れした後、程近い大刀洗平和記念館の見学を挟んで、大学へ向けて移動しました。頭も身体も心も満たされたバスでの移動時間を思い思いに楽しんでいたところ、その雰囲気をかき消すように野嶽准教授によるバス内講演第二弾「長崎国際大学発の最新の微生物応用研究」が始まりました。美肌菌とスキンケアに関する研究成果が、世界で初めての美肌菌基礎化粧品の開発に繋がったそうです。善玉菌(乳酸菌)を含むヨーグルトを食べて体調を整えるように、善玉菌(美肌菌)を含む化粧品を塗って肌質を整える、という発想は大変興味深く感じられました。美肌菌の解説後、野嶽先生が配布した資料には「美肌菌学試験」と書いてあり、それを手にした参加者の皆様は、大学で抜き打ちテストを手にしたときの学生と同じ表情でした(笑)。しかし、このテストは大変ユーモアのある出題ばかりで、笑いながら解答する人生初めてのテストとなったのではないでしょうか。
大変濃い内容の学外講座でしたが、充実していた分だけ時間が過ぎるのがとても早く感じられました。おいしいビールを堪能しながら、普段の生活ではなかなかお目にかかれない「大きな魅力に溢れる小さな世界」を覗いた充実感に満足です。ご参加いただきましたみなさまに感謝を申し上げます。来年度も学外講座を予定しておりますので、多くの皆様のご参加をお待ちしております。