学術研究トピックス
【薬学科】薬学部 薬品物理化学研究室の柴田教授、中原講師ほかが「溶存状態の分析化学」 を出版
長崎国際大学 薬学部 薬品物理化学研究室 柴田教授、中原講師が「溶存状態の分析化学」を出版いたしましたのでご紹介いたします。イオン交換による状態分析の手法、分光光度法、ポテンショメトリー等による溶存状態の分析化学的な解析手法について詳述されており、大学生、大学院生の教科書・参考書及び研究者の学習書として活用いただける内容となっています。
1.本書の概要
「溶存状態の分析化学」という用語は現在までそれほど使われる言葉ではありませんでした。それは、通常、分析とは試料中の特定成分、元素、金属、イオンあるいは分子成分の存在量やその量を明らかにすることを意味しているからです。
しかし、溶液内では単独、単純な形で存在することは稀で、少なくとも溶媒分子と結合相互作用した状態にあり、さらに金属イオンなど陽イオンの場合は反対負荷である陰イオンと結合相互作用した形になっているためです。そのため試料溶液の溶存種構成を完全に再現するには、測定結果の示す単純な元素分析結果に加え、イオン種同士の相互作用を示す数値を用いた錯種別総合的な分析表示が必要になります。こうした錯種別の状態分析は溶液組成の全貌を明らかにする学術的重要性ばかりではなく、有害金属イオンを無害化、不活性化するという実用目的にも通じる重要なものと言えます。
このような状態研究の対象として考慮に欠かせないのがイオン交換体です。本書ではイオン交換による状態分析の手法を始めとして、その他、分光光度法、ポテンショメトリー等による溶存状態の分析化学的な解析手法について詳しく述べており、薬学を始め有機化学を学ぶ大学生や大学院生の教科書や参考書として、また研究者の学習書として活用できる内容になっています。
章 | タイトル | キーワード |
第1章 | 種々の目的別状態分析 | 活量、活量係数、安定度定数、クーロンポテンシャル |
第2章 | 計算による錯体の組成分析 | 平衡定数、逐次安定度定数、逐次酸解離定数 |
第3章 | 錯体の安定度を支配する要因 | ギブズエネルギー(G)、エンタルピー(H)、エントロピー(S)の概念の導入 |
第4章 | イオン交換による溶存状態の解析 | 化学ポテンシャルと活量の概念および関係 |
第5章 | 分光化学的方法による分析 | 分子分光学、紫外・可視・蛍光スペクトル |
第6章 | その他の方法による分析 | Nernstの式、電位、電位差 |
第7章 | 実測値に対する理論的考察 | 簡単な微分方程式の解の求め方、数学的説明 |
2.本書の情報
【書名】 溶存状態の分析化学
【著者】 中島 俊男、脇 博彦、中原 広道、柴田 攻
【価格】 定価 本体2,000円+税
【形式】 単行本(130ページ)
【発行者】 長崎国際大学
【ISBN】 978-4-904962-04-6
【初版発行日】 2014年9月1日
【寸法】 A5
3.著者紹介
本学教員
柴田 攻(しばた をさむ)
長崎国際大学 薬学部 薬学科 教授/理学博士
【専門分野】生体界面解析学、生体界面科学、コロイド科学
【略歴】昭和52年3月 九州大学大学院 農学研究科 林産学専攻 修士課程修了(農学修士)、昭和58年5月 九州大学大学院 理学博士授与。九州大学助手、スイス・バーゼル大学博士研究員、カナダ・ケベック大学客員教授、フランス・ルイ・パスツール大学(現シュトラスブール大)・I.C.S.客員教授、九州大学大学院薬学研究院助教授等を経て、平成19年4月より現職。平成24年9~10月にアルカスSASEBOで開催された日本油化学会創立60周年記念大会第51回日本油化学会年会実行委員会実行委員長、World Congress on Oleo Science (WCOS 2012)実行副委員長、日本油化学会副会長を務める。平成25年度1月「生体膜関連物質の界面物性及び機能解析に関する研究」により「日本油化学会 学会賞」を受賞。宮城県出身。
中原 広道(なかはら ひろみち)
長崎国際大学 薬学部 薬学科 講師/博士(薬学)
【専門分野】物理系薬学、生体界面科学、コロイド科学
【略歴】平成20年3月九州大学大学院 薬学府 創薬科学専攻 (博士後期課程) 修了(博士(薬学))。平成20年4月 長崎国際大学 薬学部 薬学科 助手、平成22年4月 助教を経て、平成24年4月より現職。平成19年8月 日本油化学会 ヤングフェロー賞、平成23年10月 日本薬学会九州支部学術奨励賞を受賞し、平成24年3月には「高機能性を特化した人工調製肺サーファクタントの開発」により長崎県科学技術奨励賞、平成26年9月にはJournal of Oleo Scienceベストオーサー賞、「Monolayer compression Induces fluidization in binary system of partially fluorinated alcohol (F4H11OH) with DPPC」によりEditor賞を受賞。福岡県出身。
他大学教員等
中島 俊男(なかしま としお) 氏
大分大学教育学部 教授
【専門分野】溶液化学、イオン平衡、分子シミュレーション
脇 博彦(わき ひろひこ)氏
九州大学名誉教授
【専門分野】溶存状態の解析論、イオン交換、分子分光学
4.お問い合わせ
本書の内容に関するお問い合わせは、薬学部薬学科柴田または中原までお願いいたします。
電話 0956-20-5686
E-mail wosamu★niu.ac.jp(★を@に変更)
本書の注文・取次に関するお問い合わせは、経営企画室 松永までご連絡ください。
電話 0956-39-2020
FAX 0956-39-3111
E-mail kaikaku★niu.ac.jp(★を@に変更)