menu

トピックス

学術研究トピックス

【学術研究】ムール貝からギラン・バレー症候群関連糖鎖と結合する新種のレクチンを発見

~『The FEBS Journal』に発表~

 長崎国際大学大学院薬学研究科 藤井佑樹講師、藤田英明教授、吉田達貞講師、小川由起子教授、横浜市立大学理学部 大関泰裕教授、ジェレミー・テイム教授、鎌田健一大学院生、イムティアジ・ハサン大学院生らは、イタリアのトリエステ大学生命科学部 マルコ・ジェルドル博士らと国際共同研究を行い、日本の海で採れるムール貝の一種ムラサキインコガイから、抗腫瘍細胞活性をもつレクチン「セヴィル」をみつけ、構造と性質を明らかにしました。セヴィルはR-型レクチン構造をもち、貝のレクチンであるにもかかわらず、ヒトの自己免疫疾患であるギラン・バレー症候群の標的抗原であるGM1b糖鎖、ナチュラルキラー細胞のマーカーであるアシアロGM1糖鎖、iPS細胞のマーカーであるSSEA-4糖鎖との結合性を有していました。

研究成果のポイント

  • スフィンゴ糖脂質の糖鎖(GM1b、アシアロ-GM1、SSEA-4)に結合するレクチン「セヴィル」をムラサキインコガイから発見し、そのアミノ酸配列を決定した。
  • セヴィルはR-型レクチンファミリーに属し、上記の糖脂質糖鎖をもつ腫瘍細胞へ投与すると、細胞を活性化し、細胞死を招いた。

研究の背景

 レクチンは、糖鎖と結合するタンパク質です。生物には多様な糖鎖と結合するレクチンが存在し、生体防御、感染、細胞増殖調節などの作用にはたらきます。海にすむ無せきつい動物は、動物の祖先に近い遺伝子を持ち、それらのレクチンを発見し構造と性質を明らかにすることは、動物におけるレクチンの役割の解明のみならず、レクチンを治療や診断へ活かす利用技術の開発にもつながります。

研究概要と成果

 上記の目的から、長崎県で採取したムラサキインコガイに、「セヴィル」と名付けたレクチンを発見し、そのアミノ酸配列、糖鎖結合性、培養細胞への作用を明らかにしました。セヴィルは、β-トレフォイル(三つ葉)型の立体をつくることで知られるR-型レクチンファミリーに属すアミノ酸配列をもち、スフィンゴ糖脂質糖鎖のGM1b、アシアロ-GM1、SSEA-4へ結合しました。これらのうちGM1bは、細菌感染によりつくられた抗体が原因でヒトの神経細胞が攻撃される「ギラン・バレー症候群」の標的糖鎖のひとつ、アシアロ-GM1は癌の免疫に重要なナチュラルキラー細胞のもつ主要糖鎖、そしてSSEA-4はiPS細胞に存在する糖鎖、として知られています。アシアロ-GM1をもつ培養ヒトがん細胞にセヴィルを投与すると、細胞内の代謝を活性化し、細胞死を起こす作用のあることも発見されました。

ムール貝レクチン「セヴィル」

今後の展開

 GM1bは5つの単糖のつながった糖鎖です。この長い鎖がセヴィルとどのように結合しているか、今後、立体構造を解明して糖鎖結合から細胞増殖制御までの反応経路を明らかにしてゆきます。セヴィルの抗腫瘍活性を解析し、細胞の調節作用が理解されることで、レクチンの診断・治療への利用可能性が明らかにされてゆくと考えられます。

 ムール貝はレトロトランスポゾン遺伝子が原因でおきる白血病があり、その細胞は海を漂い他種の貝に伝染することが報告されています。貝の腫瘍細胞にセヴィルを投与してどのような効果が起きるかを研究し、比較腫瘍学の問いにも答えてゆきます。


研究費情報

 本研究は、科学研究費補助金、杉山産業科学財団助成金、長崎国際大学教員個人研究費および学科共同研究費、横浜市リーディング事業LIP.横浜トライアル助成金、横浜市立大学基礎研究費 を受けて行なわれました。

論文情報

題名:
A GM1b/asialo-GM1 oligosaccharide-binding R-type lectin from purplish bifurcate mussels Mytilisepta virgata and its effect on MAP kinases.
著者:
Yuki Fujii, Marco Gerdol, Sarkar M. A. Kawsar, Imtiaj Hasan, Francesca Spazzali, Tatsusada Yoshida, Yukiko Ogawa, Sultana Rajia, Kenichi Kamata, Yasuhiro Koide, Shigeki Sugawara, Masahiro Hosono, Jeremy R. H. Tame, Hideaki Fujita, Alberto Pallavicini, Yasuhiro Ozeki.
掲載雑誌:
The FEBS Jounral, doi: 10.1111/febs.15154. (2020)

本件に関する問い合わせ

長崎国際大学

資料の内容に関するお問い合わせ

学校法人 九州文化学園 長崎国際大学 大学院薬学研究科
講師  藤井佑樹 (機能形態学)research map
Tel : 0956-20-5642  E-mail : yfujii★niu.ac.jp

取材対応窓口、詳細の資料請求など

学校法人九州文化学園 長崎国際大学 総務課(担当:松永・坂本・松村)
Tel : 0956-39-2020  Fax : 0956-39-3111
E-mail : ga-s★niu.ac.jp

(★を@に変更して下さい)
PRコンテンツ
  • フォトギャラリー
  • 催事イベント情報
  • 学びの特色「茶道文化による教育」
  • 長崎国際大学ボランティアセンター
  • NIU教員DB
  • AED設置場所
  • JIHEE認証評価
  • 薬学教育第三者評価
  • 長崎国際大学同窓会
  • ibo2020
  • 古本募金
...loading