学部学科トピックス
【薬学科】多くのメディア取材を終えて:西海国立公園 九十九島と地域-国際連携による海産動物のレクチン・糖鎖研究
長崎国際大学大学院薬学研究科 機能形態学研究室は、文部科学省認定共同利用・共同研究拠点「J-GlycoNet(糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点)[1]」の支援を受け、西海国立公園九十九島の海域をフィールドに、海産動物のレクチン・糖鎖に関する研究を進めています(研究代表 准教授藤井佑樹)[2]。
この研究成果と将来性について、先日複数のメディア(NHK、テレビ長崎、テレビ佐世保、長崎新聞)より、取材を受けました。
1. どんな研究?
長崎県佐世保市-平戸市にまたがる西海国立公園 九十九島は、多様な沿岸生態系の中、200以上の島と人々の暮らしが重なる特徴的な海域です。日本を代表する生物種の宝庫であり、世界共通の沿岸環境・生物多様性・持続可能性の課題を考えるフィールドでもあります[3]。長崎国際大学は2018年度より、この海域に隣接する西海国立公園九十九島水族館を運営するさせぼパール・シー株式会社と機関連携しました。そして海産動物の遺伝子多様性の解明や、レクチン・糖鎖に関する先進的な研究を計画しました。貝類やナマコ、クシクラゲなどの無脊椎動物は、海水中の細菌やウイルスなどの病原体と隣り合わせで生きています。その生存を支える生体防御に働くのが「レクチン」や「糖鎖」などの生体物質です。これらをつくる遺伝子の起源と進化について明らかにすることは、生体防御の仕組みを理解することであり、「レクチン」や「糖鎖」を用いた次世代の創薬資源シーズの探索・開発につながります。
転機となったのが、2023年から始まった大型研究国家プロジェクト「ヒューマングライコームプロジェクト」[4]の設立と、全国の糖鎖研究者をつなぐ共同利用・共同研究拠点 J-GlycoNetの発足でした。2024年に藤井准教授がJ-GlycoNetの公募研究に採択され、トリエステ大学(イタリア) [5]から海産無脊椎動物の遺伝子解析の専門家であるマルコ ・ゲルドル博士を本学へ招き、西海国立公園九十九島水族館[6]と協力し、九十九島の動物の遺伝子多様性を調査しました[7]。その結果、九十九島海域に生息し動物進化の初期に分岐した系統の一つと考えられているクシクラゲ(有櫛(ゆうしつ)動物)[8]の「ガレクチン」は、ヒトを含めた高等動物の「ガレクチン」とは大きく異なり、細胞外へ積極的に分泌されるためのシグナルペプチドを有していることを世界に先駆けて発見しました。今後、クシクラゲガレクチンの分泌機構やその生体内での機能について明らかにすることで、生体防御の仕組みやその進化の過程を理解することができると考えています。
2. 将来構想
一見遠くに見える異分野どうしを融合させて行う学際研究から、従来の常識を超えた新たな視点が生れ、研究が加速することがあります。私たちは地域を含めた国際共同研究を進めると共に、機能形態学、計算科学、薬物動態学、細胞生物学、微生物学・生体防御学などの専門を持つ学内の教員、自然科学研究機構 生命創成探究センター(ExCELLS)などの共同利用機関、日本大学や横浜市立大学などの異なる学部と連携し、多様な専門分野の知見や技術を融合することで、レクチン・糖鎖研究の新たな展開を目指します。本研究を通じて、地域の自然・文化・社会と大学の研究をつなぎ、新たな知の創出と地域社会への貢献を目指します。
3. 補足説明
「糖鎖」:ヒトのABO式血液型を決めている物質、インフルエンザウイルスが感染するときの喉細胞の足場などを担う物質が「糖鎖」です。生物のエネルギー源となるグルコースやラクトースなどの「糖」がつながる鎖で、細胞の表面を覆います。糖鎖は疾患や再生により形が変化することが知られています。
「レクチン」:糖鎖と結合するタンパク質の総称で、動植微生物・ウイルスには、様々な形のレクチンが存在し、糖鎖の形を見分けて結合し、細胞の働きを活性化させたり、がん細胞を殺したりします。
「ガレクチン」:β-ガラクトシドという糖鎖に結合する、代表的なレクチンの一種です。
「糖鎖の日」と「クシクラゲの日」:ヒトがもつ「糖鎖」の構造を全て解明する研究の国家プロジェクトが始まり、「糖鎖」という言葉の普及目的から、10月3日を「糖鎖の日」と呼んでいます[9]。さらに翌日10月4日は、クシクラゲ(Ctenophoreテノフォア≒10+4)にちなみ「クシクラゲの日」です[10]。
[1] J-GlycoNet
https://j-glyconet.jp/research/koubo/
[2]「糖鎖・レクチン研究プロジェクト」
https://www1.niu.ac.jp/topics/study/2026/7383.html
[3] 九十九島
https://www.pearlsea.jp/99islands/introduction/
[4] Human Glycome Atlas Project
https://human-glycome-atlas.org/
[5] トリエステ大学
University of Trieste | University of Trieste
[6] 九十九島水族館
https://www.umikirara.jp/
[7] 国際研究交流
https://www1.niu.ac.jp/topics/graduate/2024/6589.html
[8] クシクラゲ
https://x.com/kujukushima/status/2086282071597875459
[9] 10月3日は糖鎖の日
https://human-glycome-atlas.org/information/20240918421/
[10] 10月4日はクシクラゲの日
https://www.umikirara.jp/en/eventp/?event_p=26335












